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良き参謀とは、よく歩きよく話す。中目黒総合事務所 税理士 廣岡実
2013-06-19

「粉飾」を読みました

書籍「粉飾(佐藤真言)」を読みました。

 

この方、銀行を退職してコンサルタントとなり、中小企業の資金繰りを中心にアドバイスしておりました。

 

その中で、ある企業の粉飾に事実上、加担し、銀行から多額の融資を受けたことが「詐欺罪」となって実刑判決をくらい、現在最高裁に上告中なので、その手記を書いたのです。

 

この著者がこういう粉飾決算を積極的にアドバイスして、銀行を欺いて多額の融資を受けたということで逮捕、実刑まで科しちゃった検察の思惑とは事実は違うようですが、私は再三出てくる著者の言い分がとても気になりました。

 

「中小企業は大なり小なり粉飾をしている。粉飾をしないと融資が受けられない現実がある。多額の融資を受けた上で計画倒産させてしまったのならともかく、融資を受けた資金も私的流用をしたのではなく、あくまでも事業資金として使った。自分だってこういうことを仕組んで成功報酬をもらったことはない。そこには銀行を騙そうという意図はない。粉飾自体は決して良いことではないことはわかっているが、こういう日本の中小企業を取り巻く状況を理解しないで、この程度で逮捕、実刑判決は重すぎる・・・。」

 

昨今言われているように、検察の描いたストーリーの通りに司法が事を進めてしまったけっかなのかもしれないし、同様のことを企む人に対して「見せしめ」の意味もあったのかも知れません。中小企業を取り巻く状況に於いて、確かに大なり小なり中小企業は粉飾して銀行から融資を受けることはあります。中には銀行から言われて、赤字決算を黒字に修正するケースも現実にはあります。本当に銀行を欺くつもりもなかったとは思います。

 

しかし、法律というのはそういうドライなところがあって、いかなる言い訳があってそれが一般の生活者としての感覚に近いとしても、法律を逸脱してしまった行為そのものは罰則の対象になってしまうのは致し方ない。

 

たとえて言うなら、空いた郊外の道路で制限速度50キロのところを80キロで走って、確かに見通しは良いし交通量は少ないし事故が起こる確率がとても少ないとしても、そこで「ねずみ取り」でスピード違反で捕まったら、

 

「この辺じゃ80キロ出すのは普通だよ・・・」

 

とか

 

「スピード違反を最初からするつもりなんてなかったよ・・・気がついたらスピードが出ていただけ」

 

という言い訳が全く通用しないのと同じようなことなんです。

 

この人はそういう法律の厳格さに気がつかないで自説ばかり主張するモノだから、検察や裁判官も意地になって実刑まで食らわせることにしたのかも知れないと、うがった見方も出来てしまいます。

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